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第4回目​レバノン編②

​難民キャンプでの暮らし

-レバノンのキャンプは、街に出ていく規制はされていないということだったのですが、買い物もしようと思えばできるんですか。

 「できる。お金も一緒だし。」

-皆さん、日常的にしているんですか。

 「多分していると思う。でもそんないっぱい、このお洋服すてき、とかっていうんじゃないと思うけど。」

-ガザの人たちは、どれほどかは分からないですけれども、訓練する学校があって、農業の指導している人もいたり、少しは自分たちで経済活動もできるのかなって。でもレバノンのキャンプは狭くて、1キロ四方の面積だったら、生活に必要なものも自分たちでは作れないですよね。

 「しようと思っても、家庭菜園さえもできないよね。」

-ガザとかベイルートの、衛生面はどんな感じなんですか。

 「衛生面は、そんなにも良くないんだけど、私は、その前にフィリピンの医療ボランティアに行ってたから、そのほうがすご過ぎちゃって、あんまり衝撃は受けなかった。でも、そこだけに来た人は、いろんなこと言ってたけどね。

 多分、神経質じゃなかったら、そんなに。例えばネパールとかのゲストハウスみたいな、そんな程度だね。私、あんまり神経質じゃないから、猫のお皿でも何でもいいわみたいな、落ちた食べ物も食べられるみたいなところがあるので。日本はきれいすぎるでしょ。」

-掃除とかしていない汚さじゃなくて。ごちゃごちゃしてる。

 「そう。それにあっちは乾燥しているからかな、ぐじゅぐじゅしてないもんね。そういえば、今言われるまで、衛生面とかあんまり考えたことなかったのね。食事もおいしいおいしいって普通に食べてて。

 難民キャンプに行くときは、一応シーツ2枚持っていくように言われてるの。寝るとき、ベイルートでは、バックパッカーたちが泊まるゲストハウスみたいな所に泊まるんだけど、そこ以外の所へ行くときは、キャンプ内のコミュニティーセンターみたいなとこに寝るのよ。積んであるマットレスを、好きな所に置いて、そのシーツを敷いて、暑いからシーツ掛けて、そんな風にして寝てる。キャンプ内は、お風呂はないよ。水のシャワーね。水は、たくさんないから、じゃばじゃばずっとシャワー浴びてたりすると、シャワーがなくなっちゃうけどね。」

-生水はもちろん飲めないんですよね。

 「ペットボトルでね。」

-そういう水とかも自分で持参して飲むんですか。

 「そうしたり、コミュニティーセンターみたいな所に行くと、よくタンクがあって、下から出るのがあるじゃない、ペットボトルにそれ入れて、自分の夜の分とか言って持って帰ったりね、もちろん売ってもいるよ。毎日お風呂入れなくて嫌だとか、ホテルのバスタブがなくちゃ嫌な人は駄目かもしれないけど、私は別に嫌なことない。」

-乾燥しているから、そんなに臭うとかそういうのは。

 「そういうの、あんまり感じないね。フィリピンのスモーキーマウンテンは、私でもひっくり返りそうだったけどね。スモーキーマウンテンって、フィリピンのゴミの山がある所で、それが発火して、煙がずっと出てるのね、そこの辺りがスラム街になっていて、みんな家建てて住んでいて。そこは近づいたら、ひっくり返りそうになった。神経質じゃない私が、『そこでコーラ飲みますか』、って聞かれたとき、断った。なぜかって言ったら、本当に失礼なんだけど、そこの空気を通ったものを飲みたくないみたいな、私ですらそんな気分に陥ったものね。

 フィリピンのスラム街の人たちは、自分たちが働きたくないとか、家族が一緒にいたら貧乏でもいいとか、ゴミ拾って暮らせればいいやっていう、遠くに働きに行ったりとか、そういうのが嫌なわけ。こっちの難民の人たちは、仕事もやりたくてもやれない、パレスチナ人としての誇りは捨ててないんだけどっていう、もう全然問題が違うのよね。

 でもスラムの子どもたちも、パレスチナの子たちも、日本の子たちも選んでそこに生まれたわけじゃなし、努力したからこっちのほうに生まれたということでもないしね。」

-キャンプ内のゴミの処理は、全くしてないんですか。

 「処理してないっていうか、できないのね。」

-皆さん、電話とかネットとかはできるんですか。

 「最近は携帯とか持ってるよ。私自身は、そこの現地の人とは通信したことないけど。現地で、私の携帯で、キャンペーンの人たちと連絡したりっていうのはあったけどね。

 キャンプにはペットじゃないけど、猫とかもいるよ。」

-住み着いている?

 「(キャンプ内の)コミュニティーセンターにも猫、いたことあるけどね、でもうちの猫ちゃんみたいに太ってないし、餌がない、普通の野生の猫だから、命は5、6年なのかな。でもキャンプの人たち、みんな別に、意地悪もしてないし、自然の、例えばすずめとかがいるみたいに、普通にいる。

 1匹ゴミ袋がくっついて、それをずっとくっつけている猫がいたんだけど、取ってあげたくても、人間に寄ってこないから、といてあげられなかったのが、気掛かりだった。人間に全然なついてないの。

 あとは、やぎがいた。毛が長いからやぎは汚いんだけど、これは飼っているのか、何なんだろうなって思いながら。」

レバノンのキャンプ内にいたというヤギ​

攻撃のつめ跡

 

 「話を聞くと、ベイルートでは、攻撃でなくなっちゃったキャンプもあるのよね。最初はレバノン全域に13カ所くらいあったのが、幾つか消滅しちゃったって聞いている。私が行ったあるキャンプでも、攻めてこられて、子どもたちを連れて避難して、静かになるまで隠れてて、静かになって、もういいかなって出てったら、もうそこらじゅうが死体で、っていうこともあったって。

 その『お墓に行きますか?』って言うから、『行きます』って行ったら、なんかもうちゃんとしたお墓ではなくって、下にはきっとたくさん人が眠っているけども、ただ、わーって広いグランドで、周りに木が植わってて、あと、こんなことがありましたみたいな、説明のモニュメントみたいなものが、ちょっとあるだけでね。」

-ここで誰が亡くなったみたいな、名前が分かるようなものは?

 「ない。まあそこまで余裕ないだろうね。そういう資料はどこかにあるだろうけど。そこに、日本から木を持ってきて植えてちょうだいって言われたけども、許可がないと持っていけないしね。大変だなと思いながら。」

ベイルートでの食事

 滞在中の食事はどんな感じなのだろうと伺ってみると、食事のおいしさについてとても生き生きとした感じでお話をしてくださいました。どこにいても、自分が楽しむということを大事にするということが、寺尾さんにとっては、大事なことのようです。

 「ベイルートとかあっちのほうに行く喜びは、お昼がおいしいことね。朝はホテルからちょっと行ってパンみたいなのを買ってきて食べて、お昼は、いわゆる炊き込みピラフみたいなんだけど、それがおいしい味なのよ。スパイスが入って。そこにナッツが入ってたり、鳥が入ってたり、バリエーションがあるんだけど、それが大皿にぴろんって来るのね。

 それともう一個、鳥を煮たり、魚を煮たりしたのが、うおっと来て、私たちの間でアラビアサラダって言っているんだけど、いつも同じスタイルで、きゅうりとトマトと玉ねぎと、イタリアンパセリ、それにレモンとかドレッシングとかが、ぼーんって来るのね。

 お皿にピラフを入れて、そのサラダも入れて、煮込んだのも入れて食べるじゃない。それにバケツみたいな中に、ヨーグルトが入っているのが来て、そのヨーグルトをかけて、それがおいしいのよ。ヨーグルトと、サラダの汁がだんだんご飯に染み込んできて。カレーのスパイスじゃないの。ごはんがベージュみたいな、茶色っぽくなるような感じのスパイス。

 いつもね、向こうのスタッフと一緒に食べるのよね。あとこんな大きい、中東のぺろぺろのパン。それにひよこ豆のペーストとかを付けて食べるんだよね。それが回ってきて、びろっと取って食べて。それが楽しみで。それを食べて、昼寝して、3時から、さあ、また始めましょうって。」

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